『もくもくやかん』という絵本を手にしたのは、1年前。登場人物の表情にとても魅かれた。作者は、かがくいひろしさん。珍しい名前なのですぐに覚えた。今年に入って『だるまさんが』という絵本を手にした。作者はかがくいひろしさん。「あっ!あの人だ」。ページをめくると「ウヒャヒャヒャ!」「ドヒャー!」という感じ。かがくいさんの他の作品も全部取り寄せた。こういう絵本を描く、かがくいさんという人はどんな人なのか、会ってみたくなって、いてもたってもいられず、千葉に向かった。

かがくいさんは、事前の連絡では、萩本欽一さんに似ているとご自身でおっしゃっていた。待ち合わせ場所に現れたかがくいさんは、本当に欽ちゃんとそっくり。
中学校のときにコント55号がちょうど出てきたんですよ。
そのときから似てるって言われて。高校に行くとメンバーが変わるから言われないだろうと思っていたら、また似てるって。浪人しても似てるって。大学に行っても似てるって。結局、就職しても似てますねえって。未だに毎年、毎年、職場のメンバーが変わるたびに、「いや〜、似てますよね」って。



欽ちゃん似のかがくいさんは、現役の養護学校の先生でもある。
元々は美術の大学だったんですが、中学校で美術を教えようとも思ったけど、結局、養護学校に行きました。ちょうどぼくが就職したときが、養護学校が義務化になった一年後で、ちょっと興味があったし。だから手本がないんです。結局、何していいかわかんないですよ。暗中模索しながら、もういろんなことやった。ひっちゃかめっちゃかですよね。めっちくちゃおもしろくって。そこにわらべ歌とか手遊びとかが入ってくる。そのときに、リズムだったり、手がかりになるものっていうのがすごくあるんで、そういった活動の中で、人形劇とかやったりしてました。


人形劇からどうして絵本に?
人形劇っていっても、普通の人形劇じゃなくって、そこらへんにあるホースとか、ちりとりとか、そういうのを使って、ストーリーもなくて、音楽に合わせて、身の回りのものを動かす。で、そのとき、何人かでやってたんで、動きをみんなに説明しなくちゃいけないんで、ラフのように描いてたんですよ。今、思えば、絵本みたいなもので。
でも、だんだん転勤とかしはじめて、みんな雲散霧消して。集まるのが大変になってきたんです。さらに週休2日制になって、土曜日の午後とかにやってたんですけど、それもできなくなってきて、自分でしこしこできることと思って絵本に行き着いたんです。



かがくいさんの絵本は、「プッ」と吹き出してしまうシーンが随所にある。
擬音語とか擬態語を合わせたいという考えが元々あったんです。うちの学校の子どもたちも、擬音とかがすごく好きなんです。『だるまさんが』の中にある「ドテッ」っていうのは、ぼくが受け持っていた子がすごい好きだった言葉なんですよ。「ドテッ」って言うとヘヘヘヘって笑う。それを拝借させてもらったんです。ストーリー性があまりない、そういうめちゃくちゃ加減というのが、今、おもしろいなって思っているんです。


会話中のかがくいさんはとても楽しそう。絵本づくりのときはどうだろう?
見たことないものをつくりたいっていうのがあります。人形劇のときもそうだったんだけど、えっ?何これ!とか。これは見たことないとかって言わせたいじゃない。絵本もそうで、自己模倣はいやで、前につくったようなやつは作りたいくない。だからけっこう楽しんでつくっちゃってるんですよね。
結局、自分が描くときに、自分がおもしろいものを描いてるんですよ。だから変な言い方なんだけど、子どもが喜ぶかどうかっていうのは、確かにあるんだけど、でも、自分がおもしろいかおもしろくないかしか判断基準がない。ぼくはおもしろくないけど、子どもだったらこれは受けるだろうという考え方はしないですね。
だから、うれしいのは、自分がおもしろいと思ったものが、全然会ったことがない人がおもしろいって感じてくれるのは、うれしいですよ。生活環境とか、まったく違う人が、自分がおもしろいと思ったものを、同じようにおもしろいと思ってもらえる、共感してもらえる。それが自信になって、調子に乗って描いてる。いいのかなって思っちゃうんだけど。



かがくいさんにとっての“絵本”の思い出は?
ぼく自身がちっちゃいときって、絵本ってそんなになくって。あったにはあったけど、ちょっと見かけたくらいで、親に絵本を読んでもらった記憶なんかゼロ。でも、歌をうたってくれたり、おはなしをいっぱいしてくれたんですよね、母親が。それがもう頭に残っちゃって。
例えば、「やぶうちくわん先生」っていうお話を覚えてるんですよ。今思えば、「やぶ医者のちくわん先生」だったんですよ。ぼくは子どもの頃、「やぶうち・くわん先生」って覚えてたんですよ。
普通、記憶から削除していいですよね、こういうことは。でも、しつこく入り込んでいて。なんで、こんないい年こくまで、いらん情報をおぼえてるんだろう。たぶんね、そこで誰が話していたとか、歌っていたかとか、その場のイメージとかが一緒になって、音とかが記憶に残ってんじゃないですかねえ。だから、シチュエーションが大事なんだろうなって思います。



お子さんには絵本を?
うちの子には、なんせ絵本はいっぱい読んでたんですよ。膝に乗っけてあげたり、布団の中で抱っこしたり。こっちが眠そうになっても、7回目だ、8回目だとかひつこいじゃないですか、子どもって。
でも、今、聞くと覚えてないですよね。うちの子が大好きな紙芝居があったんだけど、読んでやったの、覚えてないって。って言いつつも、たぶん脳の中の奥の方で、ひっかかってるんだと思う。ぼくの声とか、どっか奥の方に入り込んでる。それは裏切れないよ、っていうようなのがあるんでしょうね。
だから、実感として、子どもが大きくなって、ぼくとぶつかりあった頃、関係性が崩れそうになっても、たぶん、この子は完全には、変なところに行かないって思ってたんですよ。あの頃の関係が、一番底のところにあって、つながっているのかもしんない。



今年は新刊が出るのだろうか?
何冊か出る予定です。
ベストセラーにはならなくてもいいんだけど、絶版になっちゃわないといいなあ。でもね、とりあえず、今まで出た本は、全部、版を重ねているんですよ。


(2008年3月26日 千葉にて)

かがくいさんとお会いした2ヶ月後に、新刊が出た。『なつのおとずれ』(PHP出版)。これまた、びっくりするような展開になっている、楽しく、清々しい絵本だ。


【かがくいひろしさんの作品】

『おもちのきもち』
講談社
1500円(本体)
『おむすびさんちのたうえのひ』
PHP研究所
1200円(本体)
『もくもくやかん』
講談社
1500円(本体)
『だるまさんが』
ブロンズ新社
850円(本体)
『ふしぎなでまえ』
講談社
1500円(本体)
『なつのおとずれ』
PHP研究所
1200円(本体)


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